蟻の社会科学

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【87冊目】ごまかし勉強(上)(下) 藤沢伸介

ごまかし勉強〈下〉ほんものの学力を求めて

ごまかし勉強〈下〉ほんものの学力を求めて

 学校に行きたくありません。特に理由はないです。学校に行っていると、こんなことして何になるんだろう・・・・と不安になります。
 ずっと何の迷いもなく学校に行って、まじめに授業受けてそのまま進学しました。でも今、ばかなことみたいに思えます。半日も机に座って人の話を聞いてノートに書いて、そのことを覚えているかテストして・・・。卒業して何になるんでしょう。うまく言えないけど学校に行く意味が分かりません。
 勉強は嫌いではありません。ただ、決められたことを決められたペースでやらなければならないことに疑問を感じます。だからと言って特にやりたいことがあるわけでもなく、どうすればいいのかわかりません。
 とりあえずこのまま高校を卒業すべきなのか、他に何かした方がいいのか教えてください。
(二〇〇一年七月二十四日朝日新聞朝刊)   本書上巻P2より引用

 もはや、はるか昔のことであまり覚えてもいませんが、私も小中高時代の勉強において「これを覚えて一体何か意味があるのだろうか?」と考えていたような記憶があります。これは私だけではなく多くの人が何となく感じていたのではないでしょうか。小中高の勉強は意味があるのかという問いに対して、結論から言うと「意味がある。」と思います。しかし、最大の問題は英国社理数の本当の意義を教えることなく、ただテストのために知識を丸暗記させている教育方法に問題があるということになるのではないでしょうか。本書では知識の丸暗記してテストが終わったら忘れるような勉強方法を「ごまかし勉強」と呼び、そして教育産業自体がごまかし勉強を助長するようなシステムになっているということを、教育心理学、教育社会学など多方向から批判的に検討しています。
 なぜごまかし勉強が教育に蔓延しているのかを理由を考えます。「本能寺の変が起こったのは何年か四択から選べ」という問題は簡単に正確に採点することが可能です。しかし「本能寺の変が起こった理由について自らの考えを述べなさい。」という思考力を問う問題を正確に採点することは非常に困難です。なぜなら、明確な答えがない上にほぼ無限の選択肢が存在するからです。知識の暗記力というのはマークシート等で簡単に採点し偏差値をつけることが出来ますが、思考力を採点するというのは非常に困難です。生徒に答えのない問題の正解を、無限の選択肢から選択させて組み合させて、かつそれを公平に採点するということは、経済的にも人員的にもリソースが限定されている現在の教育システムでは現実的には不可能である、というのもまた一つの事実です。結局は現状の教育では知識の暗記力という方法でしか現実的には成績をつけられないし、教育産業全体のベクトルがそのような知識の暗記力を優先するシステムとなることを止めることも難しいというのも理解できます。
 しかし、これからの時代はもはやそのような教育観では通用しないのではないでしょうか。これからは今日まで通用したことが明日には通用しなくなるような変化の速い社会の中を私たちは生きていかなければいけません。そんな時代において既存の知識を暗記することにどれほどの意味があるのでしょうか。既存の知識を能動的に組み合わせて、変化を予測し、変化に対応していく能力というものが求められている時代です。そんな時代の中で知識の丸暗記力を競う教育を変えていかなければいけないのではないか。
 現状の教育システムの改革を目指すために、現状の教育の問題点を考える上で、本書は非常に参考になります。

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