蟻の社会科学

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【79冊目】選択の科学 シーナ・アイエンガー

 認知科学認知心理学行動経済学などをベースとして、「選択」という行為にフォーカスした好著。各人の文化的背景がどのように選択に影響を与えるか、無意識が選択に与える影響、日常生活における様々な選択について、人生における重大な選択について、など多角的に「選択」について紹介している。

 「選択」について、端的に下記の四点にまとめると
(1)人は自ら選択することを強く求める本能を持っている。
(2)選択肢が複数ある環境に身を置いておきたい。また、その中から最善の選択を出来る自信も持っている。
(3)自らの選択と、自らのプライドやアイデンティティは深く結びついている。 
(4)よって、人は選択を制限されたり、強制されることを嫌がる傾向を持っている。
人は本能的に選択の自由を求めていると言えるだろう。

 話は飛ぶが、以前紹介した「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?アトゥール・ガワンデ」という本の中で、著者で医師のガワンデが「業務効率の改善とミスの防止のために病院の業務にチェックリストを導入しようとしても、現場の抵抗が大きくなかなかチェックリストが浸透しない。」と書いていたが、その理由はこうだった。

「人はチェックリストを使うのを恥ずかしいと思っている。その都度、工夫と度胸で乗り切るのがかっこいいと思っている。」
 恐らく、人が選択を求める本能とチェックリストを使わない理由は、深い部分でつながっているのではないかと思う。
 
 この「選択の科学」によると、選択肢が多すぎると実際には心理的負担が増えて、逆に何も選ばなくなるそうだ。しかし、私たちは選択権となるべく多くの選択肢を無意識に求めている。そして、その都度最善の選択を出来ると思っている。「能動的に選択をする能力がある自分」こそが自らのプライドであり、アイデンティティだからである。だが、実際には選択肢過多によって振り回されることも多いということを心に留めておいたほうがいいなと、本書を読んで学んだ。

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