蟻の社会科学

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸に、リベラルアーツを横軸に、システム思考を最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。内容は個人的見解です。email:arinkoblog@gmail.com

【34冊目】【35冊目】「老いるアジア」小峰隆夫 「老いてゆくアジア」大泉啓一郎

 少子高齢化が深刻な社会問題として認識されて行く中で、人口で経済を切る「人口ボーナス、人口オーナス」という概念も社会の中で浸透しつつあるような気がします。「人口ボーナス」という言葉が生まれたのはそう遠くない昔のようで、15年前の1997年にA・メイスンという人物が「人口とアジア経済の奇跡 Population and the Asian Economic Miracle」という論文で用いたのが最初のようです。
出生率の低下が経済発展を促進するという人口ボーナスの考え方は、開発途上国を見る上での新しい視点として世界中に広まった。」(本文より引用)


現代社会の経済成長のフローチャートモデル図

人口動態

人口ボーナス論と(主に後発国の)経済成長モデル図
(拙ブログより引用)

 少子高齢化問題は日本に限ったことではなく、世界の成長センターと目されているアジア全体の問題なのだということを認識させられます。(少子化問題に100年前から取り組んでいたフランスさえも、程度の問題はありますが少子高齢化という大きなベクトルを転換させることは出来ていないように思います。)アジアで最も早く近代化した日本は他のアジア諸国より20〜30年ほど先を行っているだけであって、現在成長著しいアジア諸国もやがては日本と同じ少子高齢化問題に突き当たります。
 「老いるアジア」と「老いてゆくアジア」内容はかぶるところが多いですが、少子高齢化問題への対処策が微妙に違います。「老いるアジア」の小峰隆夫氏は「労働生産性の改善」「シルバー市場の拡大」など低下する経済のに対しての緩和策を重視し、大泉啓一郎氏は「アジアの連帯」を重視していると思います。
 どちらも重要な視点だと思います。ただ我々はどうやっても過去50年のような右肩上がりの時代を取り戻すことは出来ない社会の中で生きていることを、まず最初に認識することが重要だと思います。