橘玲は以前から興味がありましたが、なんとなく読む機会が無く今まで読んだことはありませんでした。新刊の(日本人)が売れているらしく、これを機会に本書を購入しました。
本書は「日本人とは何か?」という「日本人論」です。博学卓識の橘氏が様々な文献を引用しながら「日本人とは何か?」を考察していきます。政治、経済、歴史、文化人類学、宗教、さらに進化心理学、動物行動学など様々な分野に話が及びます。故に「日本人論」という焦点がぼやけてしまうことと、考察の範囲が広いのでその一つ一つが駆け足の説明になりがちな点に批判が集まるかもしれません。
専門家から見ればすべてが駆け足の説明で不十分かもしれませんが、橘氏は「細分化された専門分野に特化する学者」ではなく「作家」です。様々な分野をつまみ食いしながら全てを(強引に)纏め上げて一つのメッセージを込めたわかりやすい作品を作れるのが「作家」なのかもしれないな・・・と思いました。読みやすさで定評がある(らしい)著者なので、文章自体は平易なのですが、考察の分野が広く浅く多岐に渡るので、ある程度政治哲学や経済などに馴染みを持っていないと著者のメッセージを理解するのは難しいかもしれないと思いました。
それはともかく本書の書評を忘れないうちにメモっておこう。俺には著者のメッセージが理解できたかわかりませんが、俺なりにアレンジしながら本書の要点をまとめてみます。(枠組の中の文章は俺が本書を端折りながら曲解?して書いています。)
まとめ
駆け足で本書の内容を俺なりにアレンジして要約しました。(俺のあまりの曲解でこの本を読んだ人に叩かれそうですが)著者が言わんとすることは「誰も見たことがない新しい時代(ポストモダン)への到達」だと思います。しかし、誰も新しい時代を見たことありません。そして、著者も本書の中で新しい時代の具体像を示すことはしていません。
新しい時代の具体像を示す前に、近代の中に存在する「現在の日本人」の形を浮かび上がらせるこの仕事は非常に興味深いものだと思います。
最後に。いい本だと思いますが人間の行動を基礎付けるために進化心理学や動物行動学などの科学を濫用するのは「?」と思います。個人的意見ですが人間の行動を脳科学などと結びつけるのがあまり好きではありません。「脳科学や進化心理学では人間のこのような行動はこのように説明できる。」という考えが進んでしまえば究極的には人間はもはや人間ではなく「人間というモデル」なってしまうのではないだろうか?最終的には「人間とはこうだ!」という論破不可能な人間のモデルが構築されてしまうのではないだろうか?科学によって裏打ちされた「完全な人間のモデル像」が構築されてしまった時、それこそが近代の終わりなのではないだろうかと思います。