蟻の社会科学

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事象の認識と問題の発見

 思弁的で抽象的な思考実験のような話になりますが、事象の認識の複雑性について考えたいと思います。
 
 「A→B」という因果関係の事象があるとします。この事象を心の中で思い起こす時、心はどのような働きをするでしょうか。「「A→B」を思い起こすなんてそんなこと簡単だ!」と思われるかもしれませんが、案外難しいものかもしれません。

・A   (Aしか思い浮かばない)
・B   (Bしか思い浮かばない)
・A B (AとBが思う浮かんだが、つながりが思い浮かばない)
・A→B (正解 正しい因果関係が思い浮かぶ)
・B→A (因果関係を逆にしてしまった)
・    (そもそも何も思い浮かばなかった)

「A→B」という極めて単純な因果関係を思い浮かべようとしたときでさえ、考えられるパターンは上記の6個になるかと思います。A、B以外を思い浮かべてしまうパターンも含めるともっと多くなります。


 ではA→B→Cという因果関係ではどうでしょうか。

・A   (Aしか思い浮かばない)
・B   (Bしか思い浮かばない)
・C   (Cしか思い浮かばない)
・A B (AとBしか思い浮かばない上につながりが思い浮かばない)
・A C (AとCしか思い浮かばない上につながりが思い浮かばない)
・B C (BとCしか思い浮かばない上につながりが思い浮かばない)
・A→C (AとCが思い浮かび、因果関係も正しいがBが無い)
・C→A→B(ABCが思い浮かんだが、因果関係が間違っている)
・以下省略・・・

 ここで確認しておきたいのは、A→B、またはA→B→Cという極めて単純な因果関係ですら、考えようによっては正確に心の中で思い起こすことは難しいということです。人は、自分が知っていることと思い浮かぶこと(利用可能性ヒューリスティック)だけが、この世界の全てとつい思い込んでしまう「無知の無知」というバイアスが掛かっているので、断片的な発想で作り上げた不完全なモデルでも正しいと勘違いしてしまうことがよくあります。
 ここではA→B、またはA→B→Cというわかりやすいモデルで表現したので「こんなもの心の中で思い浮かべるなんて簡単だ」と思われるかもしれませんが、現実社会での問題はこのようにわかりやすくはありません。「「A~Z」の26個の中から複数個の正しい選択肢を選び出して、正しく因果関係を作りなさい。ただし、何が正しいかは各々の判断に委ねる。また「A~Z」以外にも、各々が正しいと思えば数字でもひらがなでも選んでかまわない。」という感じの、問題も回答も一体何が正解なのか全くわからないということが数多くあります。
 与えられた問題を解く能力も問題解決能力であることは間違いありませんが、「問題が本当に存在しているのか」「問題が何なのか」「問題の範囲はどこまでなのか」「問題に対する前提は正しいのか」など、「問題を発見して、定義する能力」がさらに一歩踏み込んだ本当の問題解決能力なのだろうと思います。