蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

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【56冊目】一四一七年、その一冊がすべてを変えた

一四一七年、その一冊がすべてを変えた

一四一七年、その一冊がすべてを変えた

 古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする中世ヨーロッパの文化運動であるルネサンス。現代の地球を覆い尽くす勢いの資本主義と民主主義のグローバリズムの起点となったルネサンス。では中世を近世に方向づけたルネサンスの起点となったのは何だろう。ルネサンスは様々な要因が複合的に絡み合って起こったと考えられている。オスマントルコの侵略とビザンツ帝国の滅亡、東方貿易、メディチ家キリスト教会の腐敗、経済状況の変化、ペストetc・・・。本書は古代ローマの詩人・哲学者のルクレティウスと中世のブックハンター、古書収集家であるポッジョ・ブラッチョリーニの二人を構成の核として、ルクレティウスの思想がいかにルネサンスに影響を与えたか、ルクレティウスの思想を掘り起こし世に送り出したポッジョの活動がルネサンスの複合的起因の一つとなったことがテーマとなっている。
 ルクレティウスという偉人がいたことを本書で初めて知った。神と迷信と伝統が幅を利かせたであろう古代ローマにおいて、現代の科学に通じる無神論的思考、唯物論的思考、原子論的思考をベースに世界を因果律によって考えるルクレティウスの思想がルネサンスに影響を与えたというストーリーは非常に興味深く読めた。そのルクレティウスの古い写本を修道院の図書館から探し出したポッジョの活動を軸に当時の社会、文化、教会、教皇庁修道院と図書館など様々な要素や背景を絡ませていて当時の社会を豊かに想像することが出来る。
 「古代ギリシャローマ」「中世ヨーロッパのルネサンス」「現代の資本主義、民主主義、超高度情報化社会」この3点を直線でつなぎ、歴史全体のフレームを考えてモデル化するために参考になる良書。ただし「その一冊がすべてを変えた」というのは言い過ぎで「その一冊がルネサンスとその後の近代社会を作る要因の一つになったに過ぎない」ことは言うまでもない。

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