蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

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【52冊目】アナタはなぜチェックリストを使わないのか?アトゥール・ガワンデ 

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

 人間の記憶力や注意力は曖昧でとても信用できるようなものではない。しかし日常では人は自分の記憶力や注意力に妙に自信を持っていて自分の記憶を頼りに業務を行い、注意力を信頼し決断を下す。その結果、人はしばしばミスを犯す。そしてミスの原因はその個人の記憶力や注意力などの個人の能力に還元される。確かにミスの原因が個人の能力に由来することもあるが、一方で人間の記憶力や注意力というあやふやなものを土台としている業務方法に問題がある場合も多い。
 本書は外科医であるアトゥール・ガワンデが医療だけではなく様々な業務において人間の記憶力や注意力を補完するチェックリストの有効性を数々の具体例と共に紹介している。


静脈にカテーテルを挿入する際の感染予防の手順は5つである
1、石鹸で手を洗う
2、患者の皮膚をクロルヘキシジンで殺菌する
3、滅菌覆布で患者を覆う
4、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋をつけ、カテーテルを挿入する
5、刺入点をガーゼなどで覆う
 決して難しい手順ではないが看護師に医師を一か月間観察させると三分の一以上の患者で一つ以上の手順が飛ばされていることが分かった。この手順に対してチェックリストを導入したところ、カテーテル挿入から10日間の感染率が11%から0%まで下がった。
 上記のように人間はほんのわずかな手順でも忘れたり、横着して手順を飛ばしたりするのだろう。本書を読むと人間の記憶力や注意力や意志力なんてわずか5項目のチェックリストにすら及ばないことがよくあるのだろうと思う。
 また同時にチェックリストを現場に導入する際に現場の抵抗が大きいことも記されている。ガワンデによると「人はチェックリストを使うのを恥ずかしいと思っている。その都度、工夫と度胸で乗り切るのがかっこいいと思っている。」とのこと。心理学者のダニエルカーネマンによると「人はチェックリストを【非人間的な決定、冷酷なアルゴリズム】として嫌う傾向がある。」と言っている。
 確かにチェックリストを使うのは面倒くさいし、日々の定型業務なら覚えている(と思い込んでいる)ので忘れたりすることはないだろうと考えてしまう。またチェックリストを使うことで"いつもやっている仕事を覚えていない"と周りの人に思われるのも恥ずかしい。しかし自分の記憶力を過信せず、チェックリストを使えばミスを事前に防いで結果的に仕事の生産性が上がることのほうが多いのではないかと思った。全てのプロセスをチェックリストにすれば冗長になりすぎて使わなくなってしまうので、要点だけ書き出してリマインダーとすることでミスを防ぐことが出来る。ヒューマンエラーを防ぐためにはチェックリストに限らず、システムや色々な仕組みをうまく使う重要さを本書は教えてくれる。