蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にロジカルシンキングを最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【33冊目】マックス・ヴェーバー入門 山之内靖

 昔のことはよくわかりませんが、一昔前、二昔前はマックスヴェーバーは「西洋文明の賛美者」「プロテスタントの権化」というような、西洋から生まれた近代社会を盲目的に翼賛する人物というイメージで捉えられていた時代もあるようです。本書は近代の賛美者としてのマックスヴェーバーではなく、近代の批判者としてのマックスヴェーバーを炙りだしています。(現在ではマックスヴェーバーは近代の批判者として語られることが一般的なのでしょうか?)


 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の締めの有名な文章。
『(前略)営利の最も自由な地域であるアメリカ合衆国では、営利活動は宗教的・倫理的な意味を取り去られていて、今では純粋な競争に結びつく傾向があり、その結果、スポーツの性格を帯びることさえ稀ではない。将来この鉄の檻の中に住むものは誰なのか(中略)それはそれとして、こうした文化発展の最後に現れる末人たちにとって次の言葉が真理にはなるのではなかろうか。「精神の無い専門人、心情の無い享楽人。このニヒツ(無のもの)は、人間性のかつて達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れるだろう」と。』
 
 カルヴァン派から生まれた恐ろしいほど無慈悲な教義はやがて数百年の時を経て、(意図せざる結果として)現代のフラッシュトレードという言葉に代表される超システマティックな金融資本主義や、人と人との繋がりを失ってしまった人々が孤独に暮らす無縁社会に至ったとのだと思います。ヴェーバーの視線は恐らくそのような非人間的な管理社会へ批判的に向けられていたのだと思います。
 本書はそのヴェーバーの近代批判をニーチェマルクスと連関させ、さらにフーコーとの親和性を示唆することにより批判の近代観を広げて行きます。マックス・ヴェーバーという知の巨人の入門書として、われわれが生きる現代を深く考えるための橋頭堡として、非常に面白い本です。
 

マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)

マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)