蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にロジカルシンキングを最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【23冊目】朽ちるインフラ 根本祐二

 ポンコツの車で北陸地方の郊外をドライブしていると、もはや使われなくなって数年は経っているであろう商業用の施設をよく見かけます。「テナント募集」の看板も無いままに、時間に身を委ねながらひっそりと佇んでいます。10年前ならその光景を見かけたら「ああ、不景気だね〜。景気が良くなればね〜。国は何やっているんだろうね!」ぐらいに思えたでしょうが、今となって思うことはそもそも人がいない・・・!」


 本書は日本のインフラがいかに老朽化しているか、そして危機的状況にあるか、その問題への解決策を提示しています。日本社会の現状の一端を俯瞰するための良書だと思います。本書の要点を3つに絞ると
1.老朽化する日本社会のインフラの現状
高度成長期以降に集中的に整備された日本社会のインフラはすでに老朽化が進んでおり、道路、橋、水道管など今後一斉に更新時期を迎える。アメリカの例と比較しながら日本の実態についての考察。
2.莫大な額にのぼる更新投資
更新時期を迎えるインフラにどれだけ費用がかかるのか。著者の概算によると今後50年間で総額330兆円、年間8兆円と試算されています。
3.更新投資をどうするのか?考え方と実践例。
当然、全ての設備を更新することはこれからの日本では出来ません。必要な設備の更新には「集中と選択」が必要となってきます。インフラの「集中と選択」を行うには自治体のインフラに対しての徹底的な調査と情報の開示。そして住民の自治参加による意見の表明が重要となってきます。インフラは「官の設計主義によるグランドデザイン」という形で構築、運営されてきた感がありますが、本書では官尊民卑の考え方を遠ざけて「官と民と地域」の共同作業によるインフラの維持という考え方が徹底されていて、その具体例が豊富に示されています。
 本書は非常に示唆に富んでいます。これからの日本社会でどのようにして「選択と集中」を行うのかその考え方と方法論は、行政に携わる方には非常に参考になるのではないでしょうか。本書はこれからの日本社会における地方自治のあり方を考えるための必読書だと思います。
 
 「集中と選択」はこれからの日本社会の中でますます必須の考え方になっていくでしょうが、日本の少子高齢化のスピードが早すぎて、国民、住民がそのスピードに追いつきながら改革を進めることが出来るのだろうか?と考えると少し悲観的になります。現在日本国内に存在している建物やインフラは1億2000万人の活動のために整備されたものですが、88年後の2100年には4700万人になると予測されている日本の人口です。あまりにも急速すぎる人口の減少は「集中と選択という改革のスピード」を上回る可能性があります。数十年後日本各地には使われることも無いまま朽ち果てた建物や道路が数多く存在するでしょう・・・
 しかし、俺は暗い未来を予測して悲観するペシミストではない!なぜそのような未来になるのか徹底的に考えないと明るい未来もないと思うので、あえて悲観的な未来も考えています。著者が言うとおり、官に全てを任せるのではなく自分自身が積極的に自治に参加していく未来像を考えるために、本書は未来を考えるための参考になります。

 

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

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