蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にロジカルシンキングを最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【22冊目】人はなぜ上京するのか 難波功士

 面白そうなタイトルに惹かれて買いました。「人はなぜ上京するのか?」について書評と、上京してUターンした俺の過去をチョコッと思い出してみます。

 本書は上京の100年史と銘打たれ、明治維新以降の日本人の上京の歴史を論じています。近代化に突っ走る日本の「一次→二次→三次という産業構造の変化」と高度経済成長を構成の軸にした重厚かつ、さほど面白味のない「上京物語」を期待していましたが、その期待はいい意味でも悪い意味でも裏切られました。本書がスポットを当てるのは文化の中心である「華の都大東京」に惹きつけられる地方出身者の心理であり、「文化論」が本書の構成の中心です。東京は単純に給料がいいから人が集まるという経済的な問題だけはなく、その多様な文化もまた人を惹きつける要素であるということ、かつて東京で暮らしていた若かりし頃の自分を思い出しました。

 
「俺はなぜ上京してUターンしたのか〜なんとなく東京〜」
 俺の上京の直接の理由は大学進学だった。東京の大学へ行くために東京へ行ったと言うのが直接の理由だ。なぜ東京の大学を目指したかというと、この理由は特に明確ではない。東京の大学へ行けばなんとなく明るい未来があるのではないだろうか、東京の大学を出てそこそこの企業へ入ればなんとなく安定した人生があるのではないだろうか。という昭和主義に侵され、特に強い意思があるわけでもなく、悪く言えばなんとなく東京へ行った。
 東京の刺激的な文化に何となく満足して、昭和主義の延長線上で東京で就職した。何となく東京での社会人生活に満足感を覚えながらも、その一方で漠然とした掴み所の無い将来に対する不安も感じながら時は過ぎた。俺が就職した業界は、かつては隆盛を誇り「高品質のMADE IN JAPAN」の代名詞だったエレクトロニクス業界だった!(今や青色吐息となってしまったが!!)しかし当時の俺は「エレクトロニクスは最先端の業界。未来は明るい!」ぐらいの認識しか持っていなかったと思う。確かにエレクトロニクスは最先端ではあるが利益になるかどうかは別問題だ。装置産業であるエレクトロニクスはいずれ日本から出て行ってしまう。当時の俺はそんなことを考えることすらなかったが・・・。
 俺が感じていた「認識することが出来ない漠然とした掴み所の無い不安」を一気に認識させてくれたのがリーマンショックだった。経済成長という何か得体の知れない存在に自分の人生の全て、身も心も全てを委ねるライフスタイル。そのライフスタイルに俺は漠然とした不安を持っていた、と言うことをリーマンショックで初めて自分自身で認識することが出来た。

 俺がUターンを決意したのは端的に言えば「金にならん!」ということ。東京で働き、地方より多少高い賃金を得たとしても生活費と相殺されて、必ずしも豊かとは言えないと感じた。ましてこれから経済縮小により税金が上がり、給料が下がることが確実に見込まれる時代だ。地方出身の東京暮らしの多くの人は今より豊かになることはないと思う。田舎で暮らしていても同じだけど
 もう一つの理由は「時間が無い!」ということ。自分の生活のほとんどを仕事を中心として 
「仕事→移動(帰宅)→睡眠→移動(出勤)→仕事」
のサイクルの中で、物理的に自分の時間を持てないこと。さらには物理的に自分の時間を持てないことにより、自分の心も仕事を中心とした人生観に取り込まれ、それ以外のことを考える時間がなくなってしまうことが怖くなった。ブラブラ適当に生きる俺には資本主義の発展の基礎となったカルヴァン派プロテスタントのような禁欲的な労働倫理を俺は持ち合わせていなかったようだ。経団連的な思考とでも言うか、そういう思考を持ち合わせていなかったようだ。
 本書でも述べられているように、昭和主義の延長線で地方から都会へ行けば豊かな暮らしがあるというような価値観はもはや通用しない時代のようだ。だからと言って地方の方が東京より豊かだというつもりも無い。関東圏の生活費が高いとしてもその賃金は地方の賃金を現時点では確実に上回る。関東生まれ関東育ちの人間と地方生まれ地方育ちの人間にはある程度の格差が存在するのは間違いない。東京にいいところはたくさんあるし、地方にもいいところはたくさんあるのでどっちがいいとが言いというつもりも無い。
 問題は長期的には少子高齢化による経済の縮小によって「東京(関東圏)」であれ「地方」であれ、貧しくなる日本でどのように生きていくかいうこと。昭和はとっくに終わった。東京だ地方だと言う価値観もとっくに終わった時代だと思う。という田舎者の考えです。