蟻の社会科学

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生活保護増加の背景〜無縁・不況・甘え〜

 生活保護受給者の数が過去最高を更新しているというニュースを最近よく耳にします。その背景について簡単に考えてみたいと思います。
 生活保護受給者が増加している目に見える理由を考えたときに、まず第一には「不況(または、経済の縮小)」が挙げられると思います。お金の循環がうまくいかなくなった社会で、お金を得ることが出来なくなった人が生活保護というシステムでお金を得る以外生きる術を失った。故に、生活保護受給者が増える。これが第一の生活保護受給者増加の背景だと思われます。
 第二の理由として「甘え」が挙げられるかと思います。生活保護受給者の増加のニュースと同時に「生活保護の不正受給」もクローズアップされています。職を選ばなければ職があるのに、職に就かずに生活保護を受給するのは単なる甘えだ。生活保護受給者の甘えこそが生活保護受給者の増加の背景である。という考え方も一つの切り口から見た場合、間違ってはいないかと思います。
 生活保護受給者の増加の原因を「不況」のベクトルで考えた場合、最終的には「景気対策最低賃金設定等、政策が不十分な政府の不作為」または「新自由主義による格差社会」というマクロでの「政府への批判」や「資本主義自体への批判」に結びつく傾向があります。また生活保護受給者の増加の原因を「甘え」のベクトルで考えた場合、「努力不足」「自己責任」「甘え」というミクロでの「個人の責任」に辿り着く傾向があるかと思われます。第一の原因の「不況」と、第二の原因の「甘え」。生活保護受給者増加の背景を論じるときのメインとなる論点かと思われますが、ここではもう一つの切り口「無縁」からの生活保護増加の背景について考えてみたいと思います。
 無縁社会については今まで何回か書いてきたので改めて詳しくここでは書きませんが、もう一度簡単に「無縁社会」について述べます。
 西洋型合理的社会が日本社会に導入される以前は「非合理的共同体」が社会の中で強い影響を持っていました。「非合理的共同体」とは地縁や血縁などを構成要素とする共同体です。親や親族とのしがらみ、土地の掟や土地の習慣などを構成要素の核とする共同体です。「非合理的共同体」が影響力を持っていた社会では、人は望もうが望まざるが他人との「腐れ縁」を持っていました。
 戦後、西洋的合理社会、即ち自由民主主義社会、資本主義社会の進展は非合理的社会を解体しながら、合理的共同体の集合へと日本を再構築しました。合理的共同体とは即ち「企業」です。「合理的共同体」は経済成長と共に社会における中心的共同体として確固たる地位を確立しました。お金を構成要素の核とする「合理的共同体」が社会で強い影響力を持ち、現在でも強い影響力を持っています。しかし、経済成長が止まった現在の社会の中では「合理的共同体」の解体が始まっています。
 「非合理的共同体」が影響力を持っていた社会では、「国家」「非合理的共同体(地縁血縁腐れ縁)」「個人」という大まかに3つの要素で構成されていました。「合理的共同体」が強い影響力を持っている社会(現在も含まれますが)では「国家」「合理的共同体(企業、お金の縁)」「個人」という大まかな3要素で構成されています。「合理的共同体」が解体されつつある現在は「国家」と「個人」だけが社会に残される要素になりつつあります。「国家」と「個人」の2つの要素になってしまいつつある社会の中で、解体されつつある「非合理的共同体」「合理的共同体」から弾き出された個人は「1、生活保護で生きる」「2、刑務所に入る」「3、自殺する」という3つの選択肢しか残されなくなりつつあります。
 生活保護受給者増加の第一の要因である「不況」と第二の要因である「甘え」の背後にある第三の要因は「無縁」であるだろうと考えます。もちろん第四、第五・・・の要因も色々考えられます。