蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にロジカルシンキングを最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【14冊目】忘れられた日本人 宮本常一

 昭和14年以来、日本全国をくまなく歩き、各地の民間伝承を克明に調査した著者が文化を築き支えてきた伝承者=老人達がどのような環境で生きてきたかを、古老たち自身の語るライフヒストリーを交えていきいきと描く。辺境の地で黙々と生きる日本人の存在を歴史の舞台にうかびあがらせた宮本民俗学の代表作。(表紙より引用) 
 我々が生きる社会は全て過去と繋がっていて、気付かぬうちにその影響を深く受け継いで現代社会は成り立っています。現代社会を考える上で過去を学ぶことは非常に有意義なことだと思います。教科書に載っているような科学的分析(マクロ視点、鳥の目)で歴史学を学ぶことも重要ですがミクロ視点(虫の目)で過去を学ぶことも非常に面白い!江戸末期〜昭和初期の時代に農村で暮らした日本人の活き活きとした生活がこの本で鮮やかに描かれています。
 特にタブー視されがちな「近代化以前の社会のセックス観」について詳細に記述されていて、その点を赤裸々に語る宮本民俗学の奥の深さを感じました。「夜這い文化」など、近代化以前の日本社会の性の奔放さについては聞いたことはありましたが、その時代を生きた古老のリアル体験を読むと江戸時代〜明治時代の性の奔放さは現代社会以上だったかもしれないと少し呆気にとられました。現代の少子化問題を考える上で、近代化以前の日本社会の「結婚観」「恋愛観」は深い洞察を与えてくれます。
 「対馬にて」で紹介された村社会の話もまた非常に興味深いものでした。現在においては「村社会」と忌避されるような濃密な社会の中で、古代ギリシャ顔負けの村民全員参加による徹底討論によって行われる「自治」。政治と個人が完全に分離して遊離する現状からは考えられないほど濃密な政治参加が近世の村社会の中では行われていたのだなぁ・・・とコミュニタリアンの俺は感心しました。
 近代化以前の日本社会で生きる無名プレイヤーの活き活きとした生活の描写を読むことによって、現代社会の閉塞感の根源をぼんやりと浮き上がらせることが出来る様な気がしました。 

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)