蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にロジカルシンキングを最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【13冊目】若者はなぜ3年で辞めるのか?〜年功序列が奪う日本の未来〜城繁幸

 現代の勢力経済学の大家、城繁幸氏のベストセラー。戦後50年に生み出された日本社会の「年功序列」という雇用構造の闇を抉り出しています。その構造が作り出す力学が若者に「絶望的閉塞感」をもたらし、離職率を高めていることを明らかにし、その「閉塞感の正体」を論じた一冊。

 俺はポスト団塊jrなので、もはや若者と言えるほど若くもありませんが、この本に述べられていることはヒシヒシと実感してきました。以前は東京でサラリーマンをやっていましたが、大学を卒業したときには所謂就職氷河期で就職先も無く、就職しても給料が安く家賃や生活費などで生活に汲々し、転職した直後にリーマンショックという大嵐に見舞われ、モチベーションを完全に喪失して、最後には本書でいうところの「昭和的価値観のレール」からドロップアウトし、田舎に帰りました。東京でサラリーマンをやっているころも田舎に帰ってきてからも「昭和的価値観」に染まりきった40代50代の人はたくさん見てきました。「フリーターや派遣は努力が足りないんだ。」と堂々と言い放つステレオタイプな昭和的価値観の人や、「このまま頑張れば○○歳で○○万円になるからお前もこのまま頑張ったほうがいいぞ」などなど・・・

 しかし「昭和的価値観」に染まっている人が必ずしも間違っているとは言えないと思います。その人たちは「昭和的価値観」「時代精神」に強い影響を受けながら生きてきたのですからそういう考え方しか出来ないでしょう。政府さえも昭和システムの維持延長を目指し、問題を先送りしながら未来のロードマップを作っているようですから。もしも、俺が今50代ならば昭和的価値観にどっぷりと漬かったまま生きていたでしょう。

 つまるところ経済が成長し続けない限り、後から社会に入ってくる人の椅子は準備されることも増えることもありません。経済成長という名の果実を貪ってきた既得権益者は「自分の努力によって富を手に入れたんだ!」と死に物狂いで椅子を守ろうとするでしょうし、若者は「俺の努力が足りないんだ・・・」と絶望してやる気をなくし、ひどい場合はニートになってしまいます。さらに「自己責任」という世論が既得権益者を擁護し増長させて、若者を更なる無気力感へといざないます。民主主義に変わるシステムが存在しないのですからこの構造を一朝一夕で変えることも不可能でしょう。

 これから日本社会で長い時間を過ごさなければいけない若い世代に出来ることは、昭和という名の化け物(良くも悪くも)が生み出した価値観「子供のころから塾へ行って、いい大学へ行き大企業へ入り都会でアーバンライフを送ったり、海外で商談をするエリートサラリーマンになること。結婚して、子供を2人生んで30年ローンでマンションか一戸建てを買って老後は年金で悠々自適」というようなステレオタイプの価値観を捨て去り、自分自身で新たな価値観を見つけることでしょうか。それは何も今すぐに仕事を辞めて自分探しをすることを意味するのではなく、心構えだけでもパラダイムシフトの次の時代へ向かうための準備をしていくことが大事なのではないでしょうか。この本は「自由民主主義社会の中に生まれた新たな封建社会」を鋭く分析していて、世代を問わずに多くの人に読んでいただきたい本です。

 この本で一つ惜しいところは「少子化問題」を「若者の貧困」とダイレクトに結びつけて論じているところです。若者の貧困が少子化を加速させていることは事実ですが根源的な原因ではないというのが俺の意見なので。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)