蟻の社会科学~リベラルアーツとロジカルシンキング~

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【9冊目】自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門 森村進

 このブログに「歴史、哲学」というカテゴリがあるが全然書いてません。「哲学、思想」は難解なので俺自身どこまで理解できているかよくわかりませんし、文章にすることも俺には難しいのでほとんど書いてません。「哲学、思想」というものは一般的には面白いものではありませんので「哲学、思想」の記事を書いたらこのブログがますますつまらなくなってしまう。 しかし社会とその構造を考える社会科学系ブログを名乗っている以上、社会構造の分析に絶対必要不可欠な「哲学、思想」について、よくわからないが書かねばなるまい。

 今回は「自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門 森村進」の書評とリバタリアニズムについて軽く考察。え〜最初に俺の意見を書いておくとリバタリアニズムは各論では賛成できる部分はあっても総論では反対です。サンデル教授の「ハーバード白熱教室」で日本社会に広く紹介された「リバタリアニズム(自由原理主義)」。本書はリバタリアニズムについての入門書という位置付けです。文章自体はわかりやすく、入門書とはいえ内容はなかなか深いです。
 リバタリアニズムにも諸派がありますが、原理的には「個人の自由」を最重要視します。「各人は自分自身の物理的な所有者である。」という「自己所有権」が思想の源泉となっています。「社会に損害を与えない限り、自分の心も体も誰にも拘束されるものではない。その自由な個人が労働によって生み出した財産は国家にも制約されるものではない。」という原理を元に人間の社会活動を考える思想です。その思想の一端として「臓器売買の自由」「婚姻制度の廃止」「国境の廃止」etc…というかなり過激なところまで行き着きます。そして、個人の自由に対しての制約を減らし、個人が自由に活動すれば様々な面で効率的な良い社会になるという思想なのかな〜。そして市場原理主義と強い親和性がある思想でもあります。
 ホッブズ、ロック、ルソーなどの近世の思想家が考えた「自然状態」「社会契約論」。自然状態と社会契約論を練り直し洗練させたロールズ「原初状態」。これらは「現実と遊離した理論」「机上の仮説のような理論」として位置づけられている面もあると思いますが、リバタリアニズムも「現実と遊離した理論」という同じカテゴリに属すると思います。その「現実と遊離した理論」について、近世においてはヒュームが社会契約論を批判し、現代においてはテイラー、サンデルなどのコミュニタリアンアトミズム(原子的個人論)として「個人がバラバラに存在する?そんなもんは机上の空論の現実離れしたフィクションじゃん?」と、この「現実と遊離した理論」を批判しています。

 え〜と、ここからリバタリアニズムには「各論一部賛成、総論反対」という俺の考えを書きます。日本社会は終戦後の1945年から2011年現在まで、政治システムはリベラリズムに近く、個人は上記のリバタリアニズムに近い思想を持って、日本社会は構築されたと思います。「自由」と「権利」と「成長」を求め続けた戦後の日本社会の結果、ありとあらゆる紐帯から切り離されてしまった人達が出現し、それが「無縁社会」「非婚化」「少子化」として社会問題になっていると思います。「アトミズム」として批判され、フィクションであったはずの「個人がバラバラに存在する社会」というものが日本社会で本当に実現しつつあるのではないか。個人は完全にバラバラの原子になりつつあるのではないか。「無縁社会〜無縁死 3万2千人の衝撃〜」「単身急増社会の衝撃」を読むとそう思えます。2030年の高齢化率が32%、単身世帯が37%、生涯未婚率が男性29%、女性23%と「単身急増社会の衝撃」で推定されているがこれは日本社会が老化しながら縮小しつつ、さらにバラバラに分解されていっていると思います。リバタリアニズムが「無縁社会」「非婚化」「少子化」という社会を生み出す原因だとすれば、そしてそれらが社会問題として認識されているのであれば、俺はリバタリアニズムには総論では賛成は出来ないという考えです。
 「「自由」と「孤立」」という論点は過去から多くの識者が指摘し、日本でも多くの識者が言及しています。「みんな自由になりたくて自由になったんだ。それで無縁社会が完成してしまったんだから、もうしょうがないじゃん・・・」という意見もよく聞きます。確かに、もうどうしようもないんだけどそれを言ってしまったら面白くないので、何とかならないだろうかと俺は考えています。。。

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