蟻の社会科学

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【7冊目】銃・病原菌・鉄 上下巻 jared diamond

 朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」(2000〜2009の図書)で1位に選ばれたベストセラー。
 著者の友人であるニューギニア人のヤリ氏から「どうしてあなたたち白人は、世界の富と権力の大部分持つことが出来たのか?なぜ我々はそれが出来なかったのか。」と問われるところから本書は始まる。言い換えるならば現在の地球の中で先進国と後進国になぜ大きな富の偏在が生じているのか?という問題かもしれないが、その問題に対しての答えを膨大な資料を用いて人類の数万年の歴史を振り返り、仮説を構築した快心の一冊。
 「1532年スペインのフランシスコ・ピサロインカ帝国皇帝アタワルパを捕らえた。そしてその後、ヨーロッパ人はアメリカ大陸を征服した。なぜヨーロッパはアメリカ大陸を征服することが出来たのか?」という問題を出されたら「う〜ん、ヨーロッパ人は鉄砲を持っていたからかな?」と普通は思ってしまうのではないか。「では、ヨーロッパ人は鉄砲を持っていて、アメリカ大陸の人はなぜ鉄砲を持っていなかったのか?」と問われたら「それはヨーロッパの方が文明が発達していたから・・・・・」と思うだろう。「ではなぜヨーロッパのほうがアメリカ大陸より文明が発達していたのか?」と問われたらもう何も答えることが出来ないだろう。
 この本は「なぜ?なぜ?なぜ?」の連鎖を究極まで突き詰めて「地理的要因」「環境」に答えを見出している。その答えは「ユーラシア大陸のほうが農業に適した植生であり、家畜となる哺乳類も他の大陸と比べると多かった。」ということである。その偶然を出発点とした連鎖の蓄積が時を経て現在に至る富の偏在を生み出している背景だ、という大胆な仮説だ。良かれ悪かれ、唯物論的アプローチを徹底的に突き詰めるこの姿勢は一目をおかざるを得ない。
 この本は読み物として面白い。それ以上にその究極的な要因まで突き詰めるという姿勢が素晴らしい。「風が吹けば桶屋が儲かる」「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」というバタフライ効果を歴史に応用して仮説を構築している。そして現在の富の偏在という問題に対して「富の偏在は人種による能力の差ではない」ことを何度も強調している著者の考えも好感が持てる。進化生物学者である著者は構造主義の元祖、西洋思想に新たな展開を切り開いた人類文化学者のレヴィ・ストロースと同じような視点を持っているんだなぁ。
 

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎