蟻の社会科学

自由に生きるため、この世界を知ることを目的としたブログです。ビッグヒストリーを縦軸にリベラルアーツを横軸にシステム思考を最適化ツールとして。興味を持った方はガイドラインからどうぞ。

【68~69冊目】宇宙創成(上)(下) サイモン・シン

 

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

 僕はかなり幼い頃から中学生ぐらいまでずっと疑問に思っていたことがあった。「目の前にあるこのおもちゃはいつから存在しているのだろうか。このおもちゃ自体は工場で作られたのだろうけど構成する物質はいつからあるのだろうか。僕が生まれたのはたかだか数年~十数年前だけど僕の体を構成する物質自体はいつから存在しているのだろうか。」というようなことを、変な子供だった僕は幼い頃よく考えていた。中高生ぐらいになるとそんなことも考えなくなりすっかり忘れていたけど、近年この本を読んで幼い頃の疑問を久しぶりに思い出し、そしておおむね納得の行く答えが見つかって嬉しくなった。
 今では宇宙が誕生したのは100億年以上昔で、大爆発(ビッグバン)がその始まりであると、詳しいことは知らなくてもなんとなくみんな知っている。宇宙に関する知識は有史以前から古代ギリシャ、科学革命を経て現代に至るまで数万年以上、人類が死に物狂いで積み重ねてきた宇宙に関する研究の蓄積によって成り立っている。本書は宇宙に魅せられ宇宙の解明に人生をかけた人々の数千年にわたるバトンの受け継ぎの物語である。
 事実というのは最初から存在するのではなく、その事実を解明するプロセスがあって初めて存在することが出来る。宇宙が138億年前に誕生したのは現在では科学的事実であるが、その事実を解明するためのプロセスがなければ、人類は今でも宇宙は「神が大昔に創った」ぐらいの認識しか持ててなかったと考えると、結果と過程の不可分性(スペクトラム性、シームレス性)を強く印象付けられる。
 サイモン・シンの著作は全て素晴らしく、人類の財産であると僕は思うが、特にこの宇宙創成が個人的には一番面白かった。

羽生さんの名言

三流は人の話を聞かない。
二流は人の話を聞く。
一流は人の話を聞いて実行する。
超一流は人の話を聞いて工夫する ~ 羽生善治

 将棋の羽生さんの言葉ですが素晴らしい言葉だと思います。人一人が一生で考えられること、知ることができることはたかが知れていると思います。しかし時の経過と共に人は自分がやってきたこと、自分が考えてきたこと、自分が知っていることに価値の重きを置き、自分が知らないことを知ろうとする意欲や、新しいことに取り組もうとする意欲が失われていくのだろうと思います。
 羽生さんは将棋界で頂点を極めてなお貪欲に人の話を聞き、取り入れる意欲があるので40代後半になってもトップ棋士でい続けることが出来るのだろうなと感心し、尊敬します。

この世界はシームレスでありスペクトラムである

f:id:pochi0326:20180701012620j:plain

 上記の図の矢印の部分は「白」だろうか「黒」」だろうかと聞かれるとどっちだろうか。「灰色」としか答えようが無いかと思う。この図では左に黒、右に白があるのが見えていて全体像が見えるので「白寄りの灰色」と答えることも出来る。でも感覚的には「黒寄りの灰色」に見えないことも無い。結局答えなんて無くて最後は自分の感覚で答えるしかない。
 世界は白か黒か定義出来ない曖昧な世界であり本当は全体像も見えない。白か黒か定義出来ない全体像も見えないと言っても、なにかフレームを作って考えていかないと収拾がつかなくなってしまうので、僕達は色々フレームを作りながら生きている。ただ便宜的に作ったフレームがいつの間にか絶対的なフレームになってしまって、そのフレームにあわせたものの見方しか出来なくなることがよくある。
 この世界は本当は白も黒も定義出来ない世界で、便宜的に作ったフレームも絶対的なものではない。この世界は曖昧なものであり、連続体(スペクトラム)であり、シームレスである。便宜的に作ったフレームに無理やり当てはめようとすることなく、そのフレームを絶対視することないような心がけは重要だと思う。

人間の非合理性

 3月24日に途中まで書いた認知科学に関する記事の続きを書こうとこの3か月間学び考え続けている。認知科学とはすなわち、人間とは何かという根源的な問題にアプローチする科学なのはないかと思う。人間とは何かという最も根源的な問題に答えが出ることなんて永遠にないのだろうけど一定のフレームを作ることは可能だろうとは思う。
 とりあえず人間が持つ根源的な習性を今日一つだけ書いておこう。それは「人間はこの世界の情報を客観的に収集して自分の考えを事実や現実に合わせていくより、まず第一に自分の考えがあり、その考えを大前提にこの世界の事実や現実を自分の都合がいいように辻褄合わせをして解釈して生きている。」という点である。この非合理性こそが人間の最大の欠点であり最大の長所なのだろう。全てを合理的効率的に生きていくだけではなく、自らが持つ非合理な信念を貫くことで人間は、社会は、固定されることなく流動性を持ち続け新たな世界を作り続けてきたのだろうと思う。

認知科学と仏教

 認知科学を学ぶ人の一定の割合が、大乗仏教唯識論との間にかなりの親和性を見出すのではなないだろうかと最近思います。大乗仏教唯識派が1700年も昔に最新の認知科学に勝るとも劣らない、人の心に関する深遠で精緻な理論を構築していたことに驚きを禁じえません。仏教ウェブ入門講座というサイトに

(前略)ところでこの「八識」については、ロボット工学の分野でも、ロボットコンテストの開催を最初に提唱した東京工業大学の森政弘名誉教授などは、「仏教では八識に基づいて心理の詳細巧妙な解析を展開しており、その精緻さには驚くべきものがある」と言っています。

また、マサチューセッツ工科大学でAI(人工知能)を研究するマービン・ミンスキー教授は、このように言っています。「人工知能をやろうとすれば、当然ながら人間の知能それから心の仕組み、働き方が標的になり、とくに心の研究には仏典が比類なきテキストになる」

と記載されていました。仏教恐るべし・・・恐るべきは仏教よ・・・

 何かを知りたいと思い、必死で学び考えある程度知識が蓄積したときに初めてその全体像の大きさと精緻さに気付くことが出来て己の無知を痛感します。まさに筋斗雲で宇宙の果てまで飛んで行ったと思い込んだ孫悟空がお釈迦様の掌の上にいた状態。大乗仏教唯識論という偉大な思想が1700年も前からこの世界にあったことを最近知ることが出来て自分の無知をまた一つ知ることが出来ました。
 

隠者(仙人、ハーミット)

 RPGゲームの職業を紹介するサイトに隠者についての説明が書かれていた。自分が賢人というつもりはまるでない、世捨て人でもないが自分のことのように親近感を感じて面白かったので備忘録として書いておこうw


職業概要
人里離れた場所に隠れ住む賢人が、隠者である。宇宙の神秘、哲学、宗教、自然、魔法、歴史などについて、いつも考えを巡らせており、一般人からは理解されない。社交を重視しておらず、そもそも服を買うのが面倒なので、みすぼらしい格好の事が多い。大抵は人間嫌いのひねくれ者だが、悪人ではないので、教えを請いに来た者には的確なアドバイスを行う。勇者たちに世界を救うための知識を授けることすらある。

就職方法
ただの引きこもりニートでは、隠者になれない。学者気質の引きこもりニートになって、初めて就職できる。研究者やシャーマンを務めた後に、人付き合いが面倒になって就職するのが一般的だ。また宗教的な真理に近づくために隠遁生活を送る者もいる。

求められる能力
衝動にも似た知識への欲求が必要だ。学んだ知識を役立てようとするのではなく、新しい事を学んだら、別の新しい事学びたくなる人に向いている。他にも難しい概念上の問題を考えるのが好き、物事を批判的に検討するのが好き、想像力豊か、一人でいるのを好むといった性格の人が望ましい。

年収の目安
0円
訪れた人に天気予報、病気に効く薬草などの知恵を授け、その見返りに貢物を受け取って暮らしている。さもなければ自給自足の生活である。収入はないと考えたほうがいい。

無知の知~私の中のミクロコスモス 脳と心と思考~

この記事は長いので何回かに分けて追記しながら書こうと思います。

1 はじめに
 このブログは社会のことを考える社会科学なのですが、ここ2~3年は認知科学に興味の中心が移りました。認知科学とは人間の知覚、記憶、思考などの知的機能の仕組みを、脳科学、心理学、哲学、言語学、宗教学、文化人類学神経科学情報科学、システム科学・・・など様々な分野からのアプローチによって解明しようとする学問です。興味を持ったきっかけはいわゆる「ロジカルシンキング(論理的思考)」が仕事を正確に効率的に行うために役に立つだろうと思い、ロジカルシンキング関連のビジネス書を読んだのが始まりでした。ロジカルシンキングの本を数冊読んだだけでは飽き足らなくなり、人間の心や思考を知るためにより根本的な脳科学認知心理学の学習も始めました。勉強の過程で人間の心や思考を研究する学際的領域(複数の学問にまたがった大きなカテゴリー)として「認知科学」という分野が確立していることを知りました。
 認知科学の勉強を始める前は脳科学や心理学はあまり好きではありませんでした。人間の心や思考というのは人にとって「最後の秘密基地」であり「自由を保証された最後の領域」であり、脳科学や心理学などはその秘密基地を暴き最後の自由を侵すようなものという感覚がありました。「最後の自由」が暴かれ、脳科学や心理学という名の透明な檻か透明なフレームに閉じ込められて心の自由を侵されるような感覚と、それに反発したい気持ちとがありなんとなく好きになれませんでした。
 しかし認知科学をある程度学んだ現在は考え方が変わりました。僕たちは心は自由でありたいけれど、その自らの心の自由によって苦しむこともまた多いと思います。思い通りにいかずイライラして八つ当たりしたりする。そのことで後でクヨクヨ悩んだりする。自分の希望に沿うように物事を勝手に解釈して後でうまくいかず悩む。愚にもつかない思い付きで不安になったり自信満々になったりする・・・。僕たちの心は自由過ぎて、心の暴走を制御することが出来ずに苦しむ。または頑固過ぎて自分の思うように動かすことが出来ずに苦しむ。この自由気ままで頑固で暴れん坊な自分の心を制御するために認知科学を学び、認知科学のフレームに心をはめることで自由は失うことなく感情と思考をサポートし、よりよい方向へ柔軟に心をガイドすることが出来ると考えるようになりました。
 この記事では心と思考について下記の順番で書いていきたいと思います。ただし単なる素人である私が「人間の脳や心」という壮大なテーマをブログの一記事として書き切れるものではありませんので、人間の心の見取り図をかなり大まかに切り出して僕の興味の中心である「無知とは何か」を中心として展開していきたいと思います。記事の内容は全て先の研究者達の研究の成果の上に成り立っています。全ての研究者の方たちに感謝と敬意を申し上げます。また内容の一部に、認知科学における一般的な解釈に反して私の主観によって解釈されている部分がある可能性がありますので了解ください。

 1 はじめに
 2 実在論と観念論 ~世界は脳の中に存在している。哲学からのアプローチ~
 3 本能と無意識 ~システム0、心のゼロポイント~
 4 二重過程モデル ~システム1とシステム2、大脳辺縁系大脳新皮質、感情と思考~
 5 歪められる世界 ~システム1、認知バイアスヒューリスティック
 6 無知とは何か ~世界と私の境界線~
 7 クリティカルシンキング(批判的思考) ~システム2、無知の知、内省~
 8 ロジカルシンキング(論理的思考) ~静的構造、要素還元主義、抽象と具体など~
 9 システムシンキング(システム思考) ~動的構造、世界は変化しながらつながっている~
10 システムシンキング その2 ~近代社会と少子高齢化をシステム思考で考える~
11 発達障害自閉症スペクトラム ~中枢性統合の脆弱性と心の理論~
12 人間の思考について散文いろいろ
13 まとめ
14 参考文献

2 実在論と観念論 ~世界は脳の中に存在している。哲学からのアプローチ~
続く

web拍手 by FC2